2020年5月12日、Bruce Rose著 - 10分の閲読
USB(Universal Serial Bus)のアーキテクチャは、1996年以来、コネクタやそれに関連する信号や電力供給の標準として使用されてきています。この時期、これらの基準を採用するシステムの性能を改善するために、仕様に多くの変更が施されました。電源設計に適用できる最新の開発には、USB Type-Cコネクタ、USB Power Deliveryの仕様、USBプログラム電源の仕様があります。かつてのUSBは、主にデータと信号のプロバイダーであり、ごく限られた電力機能を備えていましたが、機能強化により、USBは給電のための優れたオプションとなりました。この投稿では、USB Type-C、USB Power Delivery、USBプログラム電源だけでなく、これらが電源に関連する方法についても議論していきます。
USB Type-C(またの名をUSB-C)のコネクタ設計は対称性があるため、どちらの方向からも挿入可能です。つまり、正しい上下の向きなどはありません。これにより、プラグをより迅速に挿入することができ、以前のUSBコネクタの設計よりも簡単に挿入できます。以前のコネクタ設計では、ユーザーがコネクタを目で見て挿入方向を確認する必要があったため、何度も試行したり、コネクタ挿入を間違えたりするプロセスを経ることになり、多少の不便を経験することがありました。USB Type-Cプラグのもう一つの特徴として、エッジに丸みがあり、これにより、プラグが挿入されたときに自動的にアライメントできるというメリットがあります。
USB Type-Cプラグは、中程度のレベルの電力(100W以下)を提供するためのものであり、この小型のプラグが持つ仕様により、さまざまな小型電子製品に電力を供給することができます。給電および信号配信用にUSBコネクタを使用する1つのメリットとして、比較的低い開発コストで、洗練されたデザインがあります。これは、グローバルレベルでこのコネクタが広範囲で導入されていることによる、経済的規模の大きさによるものです。もう一つのメリットは、システムが多くのユーザーや製品設計によって検証されていることであり、このことは設計が信頼性を実証していることを意味し、未知の動作問題が発生する可能性が非常に低いことになります。重要なのは、USB Type-Cが提供する複雑さとスピードのために、USB Type-Cは通常、旧世代のUSBコネクタよりもコストがかかるということです。しかし、USB Type-Cコネクタのユビキタス化に伴い、コストはそれに応じて調整されていくことが予想されます。
設計者は、その洗練されたデザイン、小型サイズ、低コストといった理由からUSB Type-Cコネクタを使用することができますが、USB Power Deliveryの規格に準拠しないようにすることもできます。不適合電源の電圧が5Vで、最大負荷電流の仕様がコネクタの5A定格よりも低くなっていれば、不適合設計により機器が損傷を受ける可能性は低くなります。不適合電源が5VのレガシーUSB電圧よりも大きい出力電圧を提供する場合、著しい負荷の損傷リスクが存在します。
USB Type-Cコネクタは、USB 3.1 Gen 2やUSB Power Deliveryと密接に関係しています。このことにより、Type-C、3.1 Gen 2、USB Power Deliveryの各概念間の関係についてよく混乱が起こります。これらの概念は互いに関連し補完し合うものですが、それぞれは独立したものであることに注意して下さい。USBコネクタを使用でき、かつUSB 3.1 Gen 2やUSB Power Deliveryを実装していないデバイスまたは電源もあり得ます。
USBのプロトコルはコネクタで実装することができますが、特定のUSBコネクタで実装されるわけではありません。顧客はUSBデータと電力プロトコルを利用することで、USBによって既に導入されている開発や検証に関わる膨大な努力を活用することができますが、独自のシステムを作成するために、敢えてUSB標準型コネクタを使用しなこともできます。
USBを使うことの目的の1つは、古いバージョンと新しいバージョンの仕様に準拠した実装間の相互運用性を維持することです。USB規格の以前のバージョンでは、供給される電圧は5Vと指定されていました。USB電源供給規格では、供給される電圧を5V、9V、15V、または20Vとし、最大100Wまでの電力レベルで使用することができます。
バージョン | 最大電源 | 電圧 | 最大電流 |
---|---|---|---|
USB 2.0 | 2.5W | 5V | 500mA |
USB 3.1 | 4.5W | 5V | 900mA |
USB BC 1.2 | 7.5W | 5V | 1.5A |
USBタイプ-C1.2 | 15W | 5V | 3A |
USB PD | 100W | 5/9/15/20V | 5A |
USB Power Deliveryは、最近発売されているUSBで利用できるより高い電圧によって、5V動作用に設計されたレガシー機器を損傷しないようにするための動作プロトコルを確立します。このような損傷を防ぐために、USB Power Deliveryでは、適合機器がまず最大900mAで5Vを負荷に供給することが求められます。その後、負荷と電源との間のコミュニケーションで、より高い最大負荷電流とより高い動作電圧を確立することができます。負荷と電源を接続した後に何も通信が行われない場合は、電源の構成は5V、最大負荷電流容量は900mAのままになります。通信が確立された後に負荷と電源との間の通信が失われた場合、電源は安全に5Vと900mAの構成に戻ります。
複数の製品の電源を単一電源で賄うことができる、USB Power Deliveryのメリットは、製品が高機能で高価な場合は特に最大のメリットとなります。USB Power Deliveryのアプリケーションの一例としては、携帯電話、ノートパソコン、タブレット、スマートウォッチ、イヤホンなどの充電に使用する電源があります。これらの製品はすべて、決して電源と通信するためにかかる追加コストや複雑さに影響を与えない程度のレベルに十分に洗練されています。さらに、ユーザーは車、部屋、オフィス等の中や、デバイスに電力を提供できると思われる場所にはいるかもしれませんが、異なる電力負荷の組み合わせを予測することは簡単ではありません。このようなシナリオでは、USB Power Delivery電源は、その負荷により必要に応じて適切な電圧と電流構成を各デバイスと取り決めます。
USB Power Deliveryではより迅速なバッテリー充電が可能であると謳うことは間違いではありませんが、そこには誤解がある場合もあります。バッテリーの充電時間は、バッテリーの構造と電源の給電機能によって制限されます。バッテリーの構造上の問題ではなく、充電器の給電能力によって充電が制限されていた場合は、USB Power Deliveryを実装することでバッテリーの充電に要する時間を短縮することができます。USB Power Deliveryでは、固定出力電源と比較した場合、両電源の出力容量が同じならば充電時間は短縮されません。
USB Power Deliveryに適していないとされる製品は、比較的低消費電力の要件を備えている、複雑でない、あまり高価でない製品です。USB Power Delivery機能は電源と通信するために内蔵されるため、あまり効果でない製品では、設計や製造コストを吸収できない場合があります。負荷に電源を供給するために選択された電源のほとんどのアプリケーションでは、電源の容量は必要な負荷の分だけ選択されます。より高い容量の電源が指定された場合、電源の余分な容量によって電源のサイズやコストが必要以上にかさむ原因となります。USB Power Delivery電源の給電能力は、構成可能な電源の最大定格電力を供給するように設計されている必要があります。USB Power Delivery電源やより小型の電源のいずれかによって供給できる軽負荷のシステムでは、USB Power Deliveryを使用する事で生じるコスト面とサイズ面でのペナルティが発生します。
USBプログラム電源のプロトコルは、レガシーUSBとUSB Power Deliveryプロトコルよりも優れた給電制御を提供します。USB Power Deliveryの動作プロトコルは、USB電源がどのように個別の電圧レベルを供給するかを規定していますが、USBプログラム電源の動作プロトコルは、電源の出力電圧および電流特性を粒度レベルで制御する能力を確立しています。
USBプログラム電源が提供するような、電圧と電流のきめ細かな制御を必要とする一般的なアプリケーションは、バッテリーの充電です。従来のバッテリー充電器のトポロジーでは、バッテリー充電制御回路に電圧が印加され、システムの出力はバッテリーを充電するために適切な電圧と電流を供給します。これは、バッテリーの充電電圧と電流特性が標準化されている場合に有効であり、したがって、バッテリー充電回路を標準設計とすることができます。カスタマイズされた電圧と電流の充電プロファイルがバッテリーに必要なアプリケーションでは、USBプログラマブル電源がより良いソリューションとなる場合があります。USBプログラム電源を使用すると、負荷はバッテリーの状態を監視し、バッテリーが正しい電圧と電流プロファイルで充電されるように電源にコマンドを提供します。USBプログラム電源構成がバッテリー充電に使用される場合、標準的なバッテリー充電回路が選択される際、バッテリー充電回路のベンダーは、これらのタスクのほとんどまたはすべてを完了しているのに対し、開発チームは、バッテリー充電アルゴリズムと回路を設計、実装、およびテストする必要があります。
USB Type-CコネクタとUSB Power Deliveryの仕様は、USB基準に対して重要な強化を提供します。完全な標準を実装することでシステムを大幅に強化することができますが、新標準とプロトコルの一部のみを実装することで、大きなメリットを実現することもできます。USB Type-Cコネクタは、小型化、デザイン性の向上、低コスト化により、負荷電流が5A以下の従来の5V電源の多くのアプリケーションで使用されることが期待されています。
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