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電源の入力電圧を超えた場合に起こり得る問題は何ですか?

2018年9月25日、Ron Stull著 - 7分の閲読

電源の入力電圧を超えた場合に起こり得る問題は何ですか?

ようこそ、CUIの新シリーズの初回記事、「Pushing the Limits(限界に挑む)」へ。このシリーズでは、CUIでよく聞かれる「特定の仕様範囲外で電源を動作させるとどうなりますか?」と言う質問に対して深く掘り下げていきます。この質問に答えていくために、CUIでは一般的な電源仕様を確認し、規定範囲外で電源を動作させる際に発生する可能性がある欠点や障害を概説していきます。本シリーズのパート1では、入力電圧が電源の許容範囲を超過した場合におこり得る問題について議論していきます。

CUIのPushing the Limits(限界に挑む)シリーズのパート2、出力電流について読む
CUIのPushing the Limits(限界に挑む)シリーズのパート3、動作温度について読む

入力電圧制限

世界中で使用可能な主電源電圧とそれに伴う安定性は大きなばらつきがあり、このためすべてのアプリケーションの入力範囲のニーズを満たす電源を設計することは非常に困難です。電源の入力仕様がアプリケーションで求められる動作電圧に「十分に近い」と推測してしまうと、電源が実際は電圧制限外で動作する場合は故障につながることがあります。このような故障は、コンポーネントの故障、システム障害、または仕様の誤りのいずれかとして定義することができ、それぞれ電源とシステムのパフォーマンスに異なる影響を与えます。

入力電圧制限の超過 - コンポーネント障害

コンポーネント障害は、コンポーネントの損傷や意図されたとおりの動作をおこなわなくなった場合に発生します。コンポーネントの最大動作電圧を超過する電圧を印加すると、どのようなコンポーネントでも簡単に損傷を受けてしまいます。Xコンデンサ、酸化金属バリスタ(MOV)、ブリッジ整流器のような、入力を横切るように配置されている多くのコンポーネントは、電圧ストレスを受けることが明らかです。入力電圧が最大動作電圧を超過する場合、これらのコンポーネントの特定の故障の在り方は2、3の異なるシナリオをもたらす可能性があります。例えば、Xコンデンサは安全のために短絡を起こすように設計されており、ヒューズを開いて電源を動作不能にしてしまう可能性があります。しかし、Yコンデンサは開かないように設計されており、短絡を起こさないため、電源は継続して動作し続けてユーザはショックのリスクに曝されます。

通常のAC‐DC入力回路図
通常のAC-DC入力

ヒューズのようなその他のコンポーネントは、過電圧の発生時に故障しやすいと決めることはより困難です。通常の条件下では、ヒューズは短絡として発生するため、電圧の単にヒューズに少ない電流を流すように強要するだけです。Xコンデンサの短絡のような故障が電源内で発生した場合、ヒューズが開いて入力ソースからの回路を遮断します。ただし、ヒューズの最大電圧を超過してXコンデンサが短絡すると、ヒューズはアーク放電を抑制することができなくなります。これにより回路を開放しつづけることができなくなり、故障したコンデンサを通して継続的に電流が流れ続けることにつながり、アップストリームとダウンストリームの両方に問題を引き起こします。

他の例では、電圧ストレスは値を特定するのが困難な寄生コンポーネントに関連しています。例えば、フライバックコンバータ内のスイッチは、入力電圧だけでなく漏れインダクタンスや巻数比にもよって決定されるピーク電圧を持っています。このような場合は、電圧ストレスは、回路図やデータシートを単純に見るだけでは特定できないことがあり、その代わり直接測定をおこなう必要があります。

ディスクリートおよび寄生コンポーネントを用いた通常のフライバック回路図
左:ディスクリートコンポーネントを持つ通常のフライバック回路 右:追加された寄生コンポーネントを赤字で記したフライバック回路
フライバックスイッチ電圧負担を示すグラフ
フライバックスイッチ電圧の負担

電圧イベント下でも、コンポーネントの故障が発生する可能性はあります。最低駆動電圧以下で電源を駆動する場合、多くのコンポーネントの電流は比例して増加します。この増加した電流を流すヒューズ、整流器、スイッチ、その他のコンポーネントはすべて、より多くの電力を消費し、温度が上昇し、故障の可能性を有しています。力率補正(PFC)チョークのような磁気コンポーネントも、より多くの電流を流し、その結果インダクタンスの低下や完全な飽和状態をもたらします。特定のトポロジ―によって、これはピーク電流の増加を導き(スイッチのようなコンポーネントを故障させる可能性があります)、動作周波数を増加させ、効率を減少し、電力変換を故障させます。

入力電圧制限の超過 - システムの故障

動作周波数やデューティ・サイクルの範囲のようなパラメータを誤ると、システム障害によって様々なトポロジーの内部機能が誤動作を起こす可能性があります。例えば、LLCコンバータは、周波数がコンバータの入出力間のゲインに反比例しながら、動作周波数を変化させて出力電圧を調整します。しかし、入力電圧が低下すると、ゲインが増加して一定の出力電圧を維持するため、周波数も低下します。LLCコンバーターに本来備わっている特性では、ゲイン曲線はある周波数とゲイン間のこの逆の関係を維持するだけです。以下は、この関係が逆転したこの周波数です(すなわち、ゲインが周波数と共に増加)。入力電圧が、電源がこの領域までドリフトしたところまで減少する場合(容量性領域と呼ばれる)、電源は誤作動するか、完全に故障する可能性があります。

PFC回路で使用されているブーストコンバータを含む、一部の非絶縁型コンバータは、上下いずれかの1方向のみ変換します。ブーストコンバータの場合、入力電圧よりも高い電圧のみ出力します。力率補正付きAC-DC電源がブーストコンバータ電圧出力よりも高い入力電圧で動作する場合は、ブーストコンバータは動作せず、力率の補正も行ないません。同様に、高い入力から低い出力へと変換するBuckコンバータは、出力電圧よりも低い電圧では動作することができません。Buckコンバータも、ゲートが設置を基準にしないスイッチを含み、その結果、FETを駆動するためのゲート電圧を生成するためにブートストラップ回路を使用します。このゲートストラップ回路はゲート電圧を生成するためにスイッチ動作に依存しており、そのため、入力電圧が出力電圧に近すぎる場合は、スイッチタイミングは、ブートストラップ回路がゲート駆動電圧を生成することを防止し、その回路は機能しなくなります。

さらに、電源にも内蔵型の保護回路が備わっており、ある特定の条件下での駆動を防止します。これは、故障がより大きな危険性とコストが絡むハイパワーレベルではより一般的になってきています。電圧低下保護は、高出力AC-DC電源ではよく見られる機能で、これは入力電圧が特定閾値を下回ると電源が切れます。

入力電圧制限の超過 - 誤った仕様

仕様外の動作だけでは必ずしも故障を引き起こすわけではありませんが、電源のパフォーマンスをスペックアウトしてしまうことにつながります。以前述べた通り、入力電圧を減少させると入力電流の増加をもたらし、損失や熱の増加につながり、動作温度範囲と効率を減少させます。

電源を重大な故障から保護するために、コントローラーには多くの場合、特定の条件を避けるための保護機能が内蔵されています。これらの保護機能は電源をシャットダウンはしませんが、特性を特定の値に固定します。例えば、LLCトポロジーの場合、コントローラー内には多くの場合周波数制限がかかっています。前述の通り、入力電圧が減少すれば、スイッチ周波数は一定の出力電圧を保つために増加します。コントローラーが周波数を固定して、一度最低値に達すると、出力電圧は入力電圧に合わせて減少していきます。

仕様上の性能に対する影響は、上記にあるような特定の例では簡単に推測できますが、その他の例では入力電圧の影響は推測はより難しくなります。その1つの例は、入力電圧と電磁放射(EMI)の間の関係です。指定された入力電圧範囲外で動作すると、EMIに対して多大な影響を及ぼし、関連基準に対する不適合へとつながります。電圧や電流ストレスが追加されると、EMIフィルターの有効性をさらに変更し、可変周波数デバイスに対して、動作ポイントを故障を生じるレベルへと変更してしまう可能性があります。

結論

入力電圧は、コンポーネントのストレス、動作ポイント、性能を含む、電源の多くの側面に影響を及ぼします。指定範囲外で動作することは、これらの項目1つ以上に影響を及ぼす可能性があり、さらに押し進めてしまうことで、保護回路をトリガーしたり、完全な故障をもたらす可能性があります。電源がある方向性ではどの程度動作を強要できるか、そしてどのような影響があるかを知ることは、内部コンポーネントの評価や価値に対する知識が必要です。これは、なかなかユーザーが簡単に手に入れられるものではなく、そして見極めることも困難です。指定された入力電圧外での電源の安全操作を見極める一番良い方法は、メーカーに問い合わせることです。メーカーはリスクを特定し、求められたレベルでの動作に必要な設計変更をおこなうことができます。

カテゴリ: テストと故障の解析

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Ron Stull

Ron Stull

電力システムエンジニア

Ron Stullは2009年にCUIに参入して以来、アナログおよびデジタル電源、そしてAC-DCおよびDC-DC電力変換の分野で知識と経験を積み重ねてきました。彼はこれまで、アプリケーションサポート、テスト、検証、設計などの責任者としてCUIのエンジニアリングチームで重要な役割を担ってきました。Ronは、電力エンジニアリング以外では、ギターを弾いたり、ランニングをしたり、アメリカの国立公園をすべて訪れることを目標に妻とアウトドアを楽しんでいます。

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