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Ecodesign 2019/1782 – 最新のEUにおける効率規制とこれまでの歩み

2020年7月14日、Ron Stull著 - 8分の閲読

Ecodesign 2019/1782 – 最新のEUにおける効率規制とこれまでの歩み

はじめに

外部電源(EPS)の効率は、カリフォルニア州が2004年に初めて効率に関する要件を定めて以来、電源メーカーやOEMの懸念事項となっています。それ以来、世界各国の政府は、さまざまな効率に関する要件を採用、更新、さらに放棄までおこなってきており、これにより最新の状態を維持し、主要市場で製品の適合性を確保することが難しくなっています。最も最近では、2020年4月に変更がおこなわれ、外部電源の効率を管理するEUのEcodesign 2019/1782規制が発効されました。この新しい2019/1782基準は、多くの人が導入されると想定していた規制では(CoCティア2が予測されていた)ありませんでした。この新しい効率基準の限界は、一般に予想されていたものよりも厳しくはありませんでしたが、新たに必須のラベリングと文書化の要件が含まれています。

ヨーロッパの効率に関する歴史

欧州委員会(EC)が規制番号278/2009を規制番号2019/1782に置き代えた4月に、最新の変更がおこなわれました。以前の規制は、指令2009/125/ECの一環として、エネルギー関連製品(ErP)向けのエコデザイン要件の設定のための枠組みを確立する、欧州連合(EU)の外部電源用の本来の効率要件でした。

この要件は、家庭用電子機器やオフィス機器としての使用を目的とした単一出力の定格が、250W以下の密閉型主電源に適用されます。278/2009は、医療用アダプタ、充電器、無停電電源装置、ハロゲン照明変換器、電圧変換器(230Vacから110Vacへの主電源変換)には適用されないと明記されています。

278/2009フェーズ1

278/2009規制の実装には2つのフェーズがありました。最初のフェーズは非常に簡単なもので、2010年に始まりました。これはEnergy Starが制定し、後に米国エネルギー省(DOE)が採用した外部電源の国際効率表示プロトコル(IEMP)のレベルIVと同等のものでした。これは0.5Wの無負荷時の最大電力消費を設定し、3つの電力範囲に対して最小平均効率を定義しています(図1参照)。この平均アクティブ効率は、25%、50%、75%、および100%の負荷で測定された平均効率として定義されています。Energy Star IEMPと整合させることで、EUと米国におけるこの要件は実質的に調和されました。

電力定格 無負荷状態 効率
1W未満 0.5W 0.5 x Pout
1W~51W 0.5W 0.090 * ln(Pout) + 0.500
51 W~250 W 0.5W 0.85
図1:278/2009フェーズ1要件

また、フェーズ1で導入されたものは文書化要件でした。製造業者は、技術文書での適合性評価の結果に関する特定情報を記載することが求められました。

278/2009フェーズ2

フェーズ2はフェーズ1の1年後である2011年に起動され、基本的にはIEMPレベルVと同じです。米国は同時期にレベルVに切り替え、規制的調和を維持しました。この新しいフェーズには、AC-AC、AC-DC、そして低電圧の製品に関する3つの新カテゴリーが含まれます。低電圧とは、550mA以上の電流定格を持つ6V未満の出力電圧として定義されています。これらのカテゴリーにはそれぞれ、独自の平均アクティブ効率限界があり、同じ3つの電力範囲に分割されています。無負荷時の電力消費制限は、製品カテゴリー別に分割されたことだけでなく、2つの電力範囲(51W未満、51W超)も含めるよう更新されました。

電力定格 AC-AC AC-DC 低電圧
1W未満 0.48 x Pout + 0.14 0.48 x Pout + 0.14 0.497 * Pout + 0.067
1W~51W 0.063 x ln(Pout) + 0.622 0.063 x ln(Pout) + 0.622 0.075 x ln(Pout) + 0.561
51 W~250 W 0.87 0.87 0.86
図2:278/2009フェーズ2平均アクティブ効率
電力定格 AC-AC AC-DC 低電圧
51W未満 0.5W 0.3W 0.3W
51Wより大きい 0.5W 0.5W 該当なし
図3:278/2009フェーズ2無負荷時の電力消費

この時点までは、EUと米国は概ね調和がされていました。しかし、オーストラリア、ニュージーランド、カナダのような独自のプログラム(MEPS、GEMS、NRCan)を通してIEMPにも従う国々は、少なくともIEMPの1レベル分は遅れをとっています。詳細については、外部電源の効率基準をご覧ください。 

レベル VI、CoCバージョン 5、Ecodesign 2019/1782

外部電源向けEnergy Starプログラムは2010年に停止され(これはEUが自分たちのプランのフェーズ2を起動する前でもあった)、5IEMPレベルの定義のみをおこない、その他は将来の開発のために保持するものとなりました。2016年に米国DOEはIEMPを更新し、自分たちの要件をDOEレベルVIとして、あるいは単にレベルVIとして参照するものへと拡大しました。既存カテゴリーの効率限界を増加させることと共に、DOEは新しい電力範囲とその他の製品カテゴリーを追加しました。現在この規制は、250W超の範囲と複数出力の電源カテゴリーを指定するように規定されています。差し当たり、このことにより米国とEUとの間の調和が事実上終了しました。

一方、EUは継続してレベルVを定めていましたが、2013年以降、欧州委員会の共同研究センターは、通常CoC v5あるいはCoCと呼ばれる外部電源バージョンのエネルギー効率に関する行動規範5で定義された任意の基準を発表しました。

このCoC要件は2つのティアに分割されました。ティア1は2014年に、ティア2は(米国がレベルVI基準を導入したのと同時期である)2016年に発効されました。このCoCによって導入された重要な変更点のひとつは、一般的な効率要件が拡大されたこと以外にも、軽負荷時では効率が著しく下がり、多くのアプリケーションがこの状態でかなりの時間を費やしていることを考慮して、負荷10%での新たなテストポイントが追加されたことです。ティア1はレベルVIやティア2よりも一般的に厳格性が低減されました。CoCティア1とティア2はそれぞれ、レベルVIには存在しない10%での負荷要件が含まれています。つまり、このCoC規制が制定されると、この2市場での同期は失われることになります。

さまざまな効率レベルを示すグラフ

最新のEUの効率規制

ティア2は予定されていた2016年には制定されず、2年の遅れが生じ、その後さらにまた2年遅れました。最終的にこれは2020年に破棄され、EUはその代わりに新しい外部電源向けEcodesign 2019/1782の要件を導入しました。この新規格には行動規範の存在は本質的に一切無視されており、以前の規則番号278/2009をベースに、わずかな変更がおこなわれた形のDOEレベルVI制限を採用しています。DOEレベルVIと同様に、複数の出力アダプタのカテゴリーが追加されましたが、これには10%負荷での効率要件は含まれず、10%負荷での効率の文書化が求められています。また、この新しい規制は、DOEレベルVIでは最大定格電力が定められていないのに相反し、その範囲を最大250Wに制限しています。性能に関する基準だけでなく、製品をEUで販売する場合には、製品の表示や取扱説明書、自由にアクセスできるウェブサイト、技術文書などで提供すべき情報に対する要件があります。

ネームプレート情報 価値と精度 単位
出力 X.X W
出力電圧 X.X V
出力電流 X.X A
図4:製品ネームプレートの要件
公開情報 価値と精度 単位
メーカー名
モデル識別子
入力電圧 X V
入力AC周波数 X Hz
出力電圧 X.X V
出力電流 X.X A
出力 X.X W
平均アクティブ効率 X.X %
低負荷時の効率 X.X %
無負荷時の電力消費 X.XX W
図5:製品のウェブサイト/取り扱い説明書の要件
報告された数量 説明
RMS出力電流 10%、25%、50%、75%、および100%負荷で測定
RMS出力電圧
アクティブ出力電力
RMS入力電圧 10%、25%、50%、75%、100%、および無負荷で測定
RMS入力電力
総合高調波ひずみ
真の力率
消費された電力 10%、25%、50%、75%、および100%で計算、無負荷で測定
アクティブモード効率 10%、25%、50%、75%、および100%負荷で測定
平均アクティブ効率 25%、50%、75%、および100%負荷で測定
図6:技術文書要件

概要

この新しい規制の実際的な影響は、レベルVIやCoCティアIIの効率および無負荷要件を満たすように設計された電源装置は、この新しいEcodesign 2019/1782規制の要件も満たすようになることにあります。ただし、完全準拠済みとしてEUで販売をおこなうには、ラベルや技術文書の更新が必要です。

この一般的な調和は状況を簡素化するという点では多くを達成しましたが、同時に将来に対する明確なビジョンがないという疑問を私たちに投げかけています。おそらく、この新規制は少なくとも2-3年の間は有効であり続けるでしょう。ただし、当初の規制とは異なり、次のステップが何になるのかのヒントとなるような、第二フェーズについての記載はありません。

広域バンドギャップの半導体、プログラム可能な出力(USB Power Delivery仕様用に設計されたものなど)、新しい主要材料、新しいトポロジー、その他のコンポーネントの改良などの新技術はすべて、効率の限界ラインを押し広げています。米国では研究者たちが既に、新しい効率の限界が現実的なものか、今後の規制の範囲にどのような製品が含まれるべきかを検討し始めています。

CUIは最新技術を活用し、GaNトランジスタなど時代の先取りを続けており、現在適用できるもっとも厳格な効率基準に従う設計をおこなっています。ターゲット市場がどこであろうと、CUIは今後も引き続き規制の状況を監視し、同社のアダプタ製品群が確実に準拠するよう尽力していく予定です。

カテゴリ: 業界ニュース安全とコンプライアンス

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Ron Stull

Ron Stull

電力システムエンジニア

Ron Stullは2009年にCUIに参入して以来、アナログおよびデジタル電源、そしてAC-DCおよびDC-DC電力変換の分野で知識と経験を積み重ねてきました。彼はこれまで、アプリケーションサポート、テスト、検証、設計などの責任者としてCUIのエンジニアリングチームで重要な役割を担ってきました。Ronは、電力エンジニアリング以外では、ギターを弾いたり、ランニングをしたり、アメリカの国立公園をすべて訪れることを目標に妻とアウトドアを楽しんでいます。

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